プロダクションノート

カリーヌ・ロワトフェルドが歩む道

カリーヌ・ロワトフェルドは、アメリカ版「VOGUE」誌のアナ・ウィンターと双璧を成す世界で最も高名なファッション・エディターだ。彼女は10年間フランス版「VOGUE」誌の編集長をとして大成功を収め、“ポルノシック”というファッションスタイルを確立し、その才能が高く評価された。
2011年、フランス版「VOGUE」誌を辞した彼女は、さらなるアーティスティックな活動の場を広げ、シャネルなどの広告キャンペーンのプロデュース、「Irreverent」と題された彼女自身についてのインタビュー本やカール・ラガーフェルドとの共作でシャネルのフォトブックを出版した。
そしてその後、彼女にとって大いなるチャレンジは、究極のファッション誌を創ることで、奇抜かつグラマラスで革新的なファッション誌を目指した。彼女の名前のイニシャルを使用した「CR Fashion Book」は、他に類を見ない野心的な雑誌として、高く評価された。たとえば、彼女自身がその雑誌の広告主を決める。つまり彼女が選んだブランドに「CR Fashion Book」向けの独占広告キャンペーンを掲載するよう依頼するのだ。フォトグラファーも、モデルもライターも自らが精選する。これに関わる人間はみな、この唯一無二のプロジェクトでの役割に自分がふさわしいことを証明しようと奮闘する。
このドキュメンタリーは、ニューヨークとパリを行き来するカリーヌ・ロワトフェルドの姿、ファッションの撮影現場やミーティングの様子を追ったものである。そこで我々観客は、新しい雑誌が作られていくクリエイティブな工程を目の当たりにする。ファッション・ウィークの混沌ぶり、新作コレクションの内覧、グラマラスな夜会、新しい逸材の発掘、人々を驚かす創造力、常に新しいものを追い求める努力、撮影会の惨劇、ショーの最前列と舞台裏…。これはファッションの輪を動かしているのではく、ファッションの輪に突き動かされている、選ばれた人間の慌しい日々を映し撮ったものである。皆が皆、究極を求めて生きれるわけではない。それには相当のエネルギーと情熱が必要だ。この映画では、それらのある種の「強さ」を授かったカリーヌ・ロワトフェルドという人物を通して、あるひとつ人生を垣間見ることができるのだ。

初めて明かされるその素顔とは─。

しかし何にも増して、一見グラマーな彼女の素顔をこの映画は映し出していく。非常にパワフルなファッション業界、そしてショーを中心とした華やかな世界で、地に足をつけ、生き抜くということに対するある種の強さについて、観客は考えさせられてるのだ。
アナ・ウィンターとは正反対のカリーヌ・ロワトフェルドは、おそらくウィンターよりゴージャスかつフェミニンで親しみやすい。強い影響力や仕事ぶりが賞賛される彼女はこの「アメリカの好敵手」とは、まったく異なる感受性の持ち主だ。だが一方で、矛盾に満ちてもいるから興味深い。彼女にいくつか質問をしたいと懇願してきた「ニューヨークタイムズ」のジャーナリストに「ノー」と言ったかと思うと、招待状など持ち合わせていないファッションを勉強している学生たちをファッション・ショーに招き入れたりするという懐の深さも持ち合わせているのだ。
本作では、ファッション界の謎に満ちたアイコンである彼女の私生活とビジネスシーンでの顔が特別公開される。だがフィルム・メーカーの狙いは、ピリピリした彼女ではなく楽しく陽気な彼女だ。このアイコン的存在のファッション・エディターの周りには常にファッションがあり、ドラマやパワーがあり、そしてモデルたちがいる。エッフェル塔のような12センチのヒールを履いた生粋のパリジェンヌ。それが“マドモアゼルC”なのである。

マドモアゼルCが与える「希望」とは─。

世界をリードするフォトグラファー、モデル、デザイナー。彼らとの世界が彼女の日常である。と同時に、子供も夫もいるこのセクシーな50代半ばの女性には初孫も生まれ、またさらにそのプライベートは充実している。このドキュメンタリーでは、ビジネスウーマンとして生きる彼女が、私生活と仕事の世界の融合でどう生きているのかを描き出していくことで、周囲の人々が彼女に心酔する理由を解き明かしていく。仕事に精をだしつつも、母として、妻としての生き方を意識する現代の女性たちにとって、カリーヌの生き方は大きな希望となるだろう。
観客には、ショーとコミュニケーションがすべてという複雑でパワフルな世界の裏側を見てもらいたいと思う。その夢のような世界の裏側で、多くの人々が奮闘する姿もまた美しいのだ。