インタビュー

ピンヒールで生きる、マドモアゼルC閉ざされた世界への潜入

ファッションそのものとカリーヌの日常生活への潜入。これを成し遂げるために、私が選択した手法は、出演者がカメラを意識しない撮影方法だった。私たちは彼女を追ってどこへでも同行する。車の中、オフィス、ドレッシングルーム。この映画には2つの世界が存在する。2つの同時進行するストーリーに沿って、ナレーションが語られていく。1つのストーリーは雑誌にまつわるもの(その立ち上げ、ミーティング、写真撮影、編集会議)、もうひとつのストーリーは、カリーヌ・ロワトフェルドの日常にまつわるもの(贅沢で華麗で、ファッション・ショーとパーティーに明け暮れる日々)である。
今回の私の意図は、この撮影スタイルで、その場の状況に応じた撮影をしていくことだった。編集会議の撮影に時間を掛け、雑誌を作っていく過程で起きる様々な出来事や、美的感覚と経営的手腕の両方が掛かった仕事の現場を映し出したい。またカリーヌを取り巻く側近たちそれぞれの個性や、彼女に対するアドバイス、物の考え方にも光を当てる。そのために、私はとても客観的で控えめな手法を用いた。新しいアイデアを出し合うブレイン・ストーミングを行う編集ミーティングは「監視カメラ」的な撮影をし、ビデオ撮影のような、機能的な感じを意識したのだ。
それとは対照的に、カリーヌの生活を捉える部分については、パワーを持つ女性の日常であり、ファッションに対する独自の情熱を持ち、他の人たちがファッションに強い関心を持つようにその情熱を傾けている日々なのだから、混沌としたものを映像から滲ませることを意識した。そのため温かみのある色で多くの動きを取り入れ、カメラも固定せず躍動感を出すために、この華美な世界の狂乱ぶりを映し出した。ファッションの世界、キャットウォーク、写真撮影、こういったものは、映画の大きなスクリーンで見せるのはとても難しい。そこで私は瞬間、瞬間にこだわった。そして細かなディテールや、手の動き、織地の織り成す起伏、モデルのウォーキングや視線といったものを捉える。これまで何度も作られたが、ほとんど成功してこなかったファッション・ショーのビデオクリップではない、「映画」という作品の中で彼女を描きたかったのだ。これらのすべての映像をつなげたテーマは、カリーヌの「ヒール」だった。マドモアゼル・ロワトフェルドは、常に12センチの高さのヒールを愛用し、私たちのレベルまで降りてくることはない。彼女の靴はシーンが変わるごとに登場し、観客には日が変わり、時間が変わったことを告げる役割を担うはずだ。
私は長い間、ファッション界でデッサンから針子の仕事、キャットウォークに至るまで、いろいろなシーンを撮り続けてきたので、ファッションというものがどういうものであるのかを見つめる目を養ってきた。ファッションの世界は華やかで魅力的ではあるけれども、想像以上に厳しい世界でもある。
そして、その中においてカリーヌは完璧な大使の役を担っているのだ。
観客は、「ファッションこそ自分の人生」と決意したこの女性に魅せられ、引き付けられることは間違いないだろう。